旭川の銀座商店街にある「第一市場」。通路を歩くと、シャッターの閉まった区画がある一方で、商品がぎっしり並ぶ店先にも出会う。天井には、onちゃんを思わせる黄色い飾りや、ばいきんまんのようなキャラクターの飾りがぶら下がっている。古い市場特有の空気が漂いながらも、そこには今の買い物の風景があった。
この市場が開設されたのは1918(大正7)年。旭川で最も古いとされる市場だ。今回は、現地で撮影した写真と動画を交えながら、第一市場の歴史と、実際に歩いて感じたことを紹介したい。

1918年開設。旭川第一市場が生まれた街
第一市場があるのは、旭川市の銀座商店街。北海道新聞旭川支社の地域情報サイト「ななかまど」では、第一市場を1918年開設の旭川最古の市場と紹介している。
市場の歴史を知るには、周囲の街の歩みも欠かせない。銀座商店街の一帯には明治末期から人が集まり、近隣の農村部から買い物に訪れる人もいたという。1909(明治42)年には芝居小屋「大黒座」が開業。買い物と娯楽が同じ街に集まっていた時代だ。
いま「銀座商店街」と呼ばれるこの場所も、最初からその名前だったわけではない。「大黒座」はのちに名称を変え、映画館「銀映座」になった。銀座通りの名は、この銀映座に由来すると伝えられている。第一市場を訪ねることは、市場だけでなく、かつて人々が買い物や娯楽を楽しんだ街の歴史をたどることでもある。
実際に歩いた第一市場の印象
中に入ってまず目に留まったのは、昔ながらの通路に残る店先の様子だった。シャッターが下りた場所もあるけれど、その隣には商品が並んでいる。整然と区画された新しい商業施設とは違い、店ごとに並べ方も雰囲気も異なる。

壁には掲示物が貼られ、天井からは、onちゃんを思わせる黄色い飾りや、ばいきんまんのようなキャラクターの飾りがぶら下がっていた。長い年月を経た建物の中に、こうした手づくりの温かさがあるのが印象的だった。


店先に並ぶ食品や日用品を見ていると、ここが観光のためにつくられた場所ではなく、毎日の買い物を支えてきた場所なのだと感じる。何十年も前の写真を見ているわけではない。撮影したその日の第一市場の姿が、そこにあった。

老舗の餅店も。市場に残る「買いに行く理由」
第一市場には、長く地元で親しまれてきた店がある。その一つが、1957(昭和32)年創業と紹介される「あさひ餅店」だ。餅や和菓子を扱い、季節にはいちご大福も話題になる人気の餅店として地域メディアで取り上げられている。
古い市場と聞くと、建物の年数や昔の賑わいに目が向きがちだ。でも、今も「ここの餅を買いたい」と足を運ぶ人がいることは、第一市場の現在を知るうえで大切な話だと思う。市場が長く続いてきた理由は、建物だけでなく、こうした店の積み重ねにもあるのだろう。
また、撮影した写真には「外川商店」の看板や、店先に並ぶ品々も写っている。通路を歩いて一軒ずつ眺めると、市場全体を一言で「昔ながら」と片づけられない、それぞれの店の表情が見えてくる。

※店舗の営業状況や取扱商品は変わる場合がある。写真は撮影当時のもの。
市場の外にも続く、銀座商店街の歴史
第一市場を出たら、銀座商店街そのものにも目を向けたい。通りには赤い鳥居を思わせる街路灯が並ぶ。旭川観光コンベンション協会によると、1978(昭和53)年には商店街の一部が旭川市内で二番目の恒久的な歩行者天国となり、2001(平成13)年には現在につながる街路整備が行われた。
かつて芝居小屋に人が集まり、市場で買い物をし、歩行者天国として整備されてきた通り。第一市場の通路を歩いたあとで商店街を見渡すと、一つの市場の歴史が街全体の変化とつながっていることに気づく。
変わり続ける街と、第一市場のこれから
一方で、歴史の長い市場には建物の老朽化などの課題もある。地域経済誌『月刊北海道経済』は2022年、第一市場を含む銀座商店街周辺の再開発構想を報じた。複数の権利者が関わるため、計画をまとめる難しさも指摘されている。
ただし、再開発の構想が報じられたことと、市場の閉鎖や建て替えが決定したことは別だ。今後の状況は最新の情報で確認する必要がある。
私が今回残したかったのは、変わるかもしれない未来を先回りして語ることよりも、訪れた日に実際に見た風景だ。営業する店、閉じたシャッター、通路の飾り付け。そうした細部こそ、あとから振り返ったときに街の記録になると思う。
ドラマの「旭川夕焼け卸売市場」から思い浮かぶ、旭川の市場風景
ドラマ『LOST10』に登場する「旭川夕焼け卸売市場」。その名前を聞くと、昔ながらの市場の通路や、店が軒を連ねる風景を思い浮かべる人もいるかもしれない。
実際の旭川にも、そんな昔ながらの市場が残っている。今回歩いた第一市場は、1918年から続く市場。長い歴史を持つ建物の中で、今も店先に商品が並んでいる。
ドラマの舞台として登場する市場と、実際に旭川に残る市場は別のものだけれど、作品に登場する地名をきっかけに、こうした街の歴史へ目を向けてみるのも面白い。撮影協力先としては東京都府中市の大東京綜合卸売センターの名前も挙がっている。
新日の出市場を歩いた記事はこちら。同じ旭川の市場でも、通路の雰囲気や撮影した風景はかなり違う。二つを見比べると、旭川に残る市場の多様な表情が伝わると思う。
動画で歩く旭川第一市場
現地で撮影した動画も公開している。店先の並びや通路の奥行き、写真だけでは伝わりにくい空気感は映像でも見てもらえたらうれしい。
おわりに
1918年から続く旭川第一市場。古い市場に足を踏み入れると、建物の歴史だけでなく、今も店を開けている人たちの姿が見えてくる。街が変わっても、店を訪ねる理由が残っている。そのことが、今回歩いていちばん印象に残った。



コメント